「親の発音が悪いと、子どもに変なクセがつくのでは?」
おうち英語を始めようとしたとき、多くのママ・パパが一度はここで立ち止まります。
ネットを見れば「ネイティブじゃない親は英語で話しかけない方がいい」という声もあれば、「親こそどんどん話すべき」という声もあって、どちらを信じればいいのか迷ってしまいますよね。
日本を離れて海外で暮らし、2人の息子を英語で育ててきた私の答えは、はっきりしています。
自信を持って、ママ・パパの英語で話しかけてほしい。
家庭の英語環境づくりに、親の声以上に効くものはない。これが、子育てを通して私が体感したことです。
「英語はネイティブに習うもの」という思い込み
日本で英語の話になると、こんな言葉をよく耳にします。
- ネイティブみたいにペラペラ話せる人に憧れる
- 習うなら、アメリカ人かイギリス人の先生がいい
- 子どもの先生は、英語圏出身のネイティブが絶対条件
学生のころから今まで、何度も聞いてきた言葉です。でも、海外で友達をつくり、働き、出産と子育てをしてきた今、この「ネイティブ信仰」には、私ははっきり反対の立場です。
いま英語は、世界の共通語です。子どもたちが大人になって英語で話す相手は、アメリカ人やイギリス人だけではありません。インド、スペイン、フランス、中国、韓国……。いろいろな国の人が、それぞれのアクセントで英語を話しています。日本人の英語に日本語らしい響きがあるのも、同じこと。恥ずかしがる理由は、どこにもないんです。
シンガポールで気づいた「英語は生きている」ということ
オーストラリアのメルボルンからシンガポールに移ったとき、「英語さえ話せれば困らないはず」と、正直甘く見ていました。
ところが、オーストラリアで慣れた話し方のままだと、地元の人や、そこで暮らすいろいろな国籍の人になかなか通じないことがあったんです。
そこで、中国語なまりの英語やシンガポールのスラングを少しずつまねして、地元の友達や、世話好きな近所のおばあちゃんと仲良くなるようにしていきました。すると、相手の表情がぐっと柔らかくなって、文化や習慣を深く知るきっかけになる、すてきな友達がたくさんできました。
そのとき実感したのが、英語は人とつながり、暮らしをよくするための「道具」だということ。そして、言葉は人が使うものだから、生きていて、相手や場面によって形を変えていくものなんですよね。
目の前の人に自分の気持ちが伝わって、相手の言いたいことがわかる。それができたら、会話としては大成功です。文法や時制が正しかったか、発音がきれいだったかは、その場ではほとんど気にされていません。
なまりは「チャームポイント」
自分の英語のなまりを恥ずかしく思う気持ち、英語圏以外で育った人ならきっと一度は感じたことがあると思います。私もそうでした。
そんな私に、スイス出身の親友が言ってくれた言葉があります。
自分のなまりを恥ずかしがるなんておかしいわよ。母国があって、その上で英語を話してるんだから。どの国のなまりもチャーミングよね。
目が覚める思いでした。彼女自身、フランス語なまりの英語を話します。アメリカに住んでいたころは、そのなまりで傷ついたこともあったそうです。でも、彼女らしさがあふれるその英語を聞くのが、私は大好きなんです。
言葉は、コミュニケーションの道具であり、自分を表現する道具。それ以来、「通じるなら、自分のなまりもチャームポイント」と思えるようになりました。
子どもの英語は、どこを目指せばいい?
ネイティブのように話すこと。ニュースキャスターのような英語。映画俳優のようなかっこいい発音。最初からそこを目指す必要は、私はないと思っています。
大切なのは、「自分の言いたいことが相手に伝わるかどうか」。そこを目指すなら、中学英語の範囲で十分に戦えます。完璧な英語より、間違いを怖がらない気持ちや、チャレンジする心、好奇心の方が、英語で人とつながる力をずっと大きく育ててくれます。
世界の家庭は、何語で子育てしている?
いろいろな国から来た人が暮らすオーストラリアでは、こんな家庭が当たり前にあります。
- 中国語と英語とマレー語で子育てしている家族
- タガログ語と英語で話しかけているフィリピン出身のママ
- イタリア語と韓国語と英語が混ざる同級生の家族
- フランス語、イタリア語、英語が飛び交うご近所さん
どの家庭も、親の母語を大切にしながら、共通語の英語でも子どもに話しかけています。親の英語がネイティブ並みかどうかなんて、誰も気にしていません。
「それは海外に住んでいるからでしょう?」と思われるかもしれません。でも「ネイティブ並みでなければ英語で話しかけてはいけないのか」という点では、日本のご家庭もまったく同じだと思うんです。
親の発音は、子どもの一生を決めない
ママの英語にアクセントがあっても、子どもがこの先ずっと、ママの英語だけを聞いて育つわけではありません。
テレビや動画、歌や絵本の音声、学校や習いごとの先生、いつか出会う世界中の人たち。子どもの発音や語彙は、これから触れていくたくさんの英語の中で、どんどん変わっていきます。
うちの息子たちも、シンガポールにいたころはシングリッシュを、オーストラリアに引っ越してからはオーストラリア英語を、あっという間に身につけていきました。子どもの柔らかさには、何度も驚かされています。
おうち英語でいちばん大切にしたいこと
発音に自信がなくても、これさえあれば大丈夫だと私が思っているのは、「ママ・パパも、子どもと一緒に英語を楽しむ」という姿勢です。
親は、英語を教える先生でなくていいんです。わからない単語や発音は、その場で一緒に調べればいい。子どもと学ぶ英語は、子どものためだけでなく、ママ・パパ自身の世界も広げてくれます。
今やっているのは、子どもの「興味のタネまき」。英語に限らず、遊びでもお手伝いでも、いくつものタネをまいて、水をやり、ときどき肥料をあげる。どんな花が咲くのか、どんな実がなるのかは、まだわかりません。でも、まかなければ何も始まらないんですよね。
動画やテレビの英語もいいけれど、ママ・パパの声で聞く英語は、子どもにとって特別です。発音や文法の間違いは、長い人生の中でいくらでも直す機会があります。
まずは、おうちの中に英語がある毎日を。一度でも海外で、いろいろな国の人と英語で話してみると、「通じる英語」のハードルは思っているよりずっと低いこと、そして違う文化の人と話すのは本当に楽しいことに、きっと気づけると思います。
「何を言えばいいかわからない」ときのために
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